第14回日本医薬品情報学会総会・学術大会開催にあたって

 このたび、第14回日本医薬品情報学会総会・学術大会を、東京都江戸川区のタワーホール船堀(江戸川区総合区民ホール)にて開催する運びとなりました。 日本医薬品情報学会は、医療従事者、大学関係者、製薬・医薬品流通関連企業の関係者、行政担当者など、医薬品情報学に関する様々な分野の専門家が集い、 医薬品開発プロセスとしての創薬・医薬品適正使用・育薬に役立つ学問体系の発展に努めて参りました。そこで今大会では、メインテーマとして 「医療を俯瞰 (ふかん) する医薬品情報学」を掲げました。これは、2008年4月に発足した本学会のビジョン委員会(委員長:澤田康文)において 一年間にわたる議論から得られた本学問分野の基本理念です(詳細は「医薬品情報学研究のあり方」報告書をhttp://jasdi.jp/からご覧ください)。 すなわち、医薬品情報学は、医薬品開発プロセス、さらには医療全体を、「情報」という切り口からあたかも鳥瞰図を見るがごとく 学際的かつ統合的に評価・提言する役割を担うべきとの考えに基づいています。 これまでの医薬品情報学研究の成果を、真に実践的な医薬品情報へとつなげて社会に安心・安全な医療を提供すべく、幅広い議論をいただけるプログラムと致しました。
 医薬品開発研究や医薬品情報学研究は、コンテンツ、プラットフォーム、インフラの各階層において、最先端の科学・技術と高度な倫理観を基盤として展開されています。 しかし我々は、情報学の研究者として情報に対してどう向き合うべきか、という点については、あまり考える機会はありませんでした。 そこで本大会では、社会情報学者である東京大学大学院 情報学環教授・姜尚中先生に「情報化社会で考えること-不確かな時代を生き抜く-」(案)と題して特別講演をお願い致しました。 また、教育講演として、「医薬品審査結果報告書・申請資料概要の読み解き方」、「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度の活かし方」という2テーマ(案)を企画しました。 これらは、医薬品情報リテラシーを研鑽するために必須の内容といえます。 また、シンポジウムとして「抗癌剤適正使用のための手作り薬薬連携」「IT・ユビキタス社会と医薬品情報」「リスクコミュニケーションとコンコーダンスに活かす医薬品情報」 「いよいよ始まる医薬品情報専門薬剤師制度」「大学における医薬品情報学教育の進化」という5テーマ(案)を企画しました。 これらは、医薬品情報学の基礎研究から臨床への展開とそれらを支える薬学教育までをカバーした内容で、各分野の第一線でご活躍の先生方に最新の話題を提供いただき、 活発な討論が期待されます。また、今大会ではじっくりと議論する場としてポスターセッションも設けました。
 東京での学術大会が、医薬品情報学の新たな展開の第一歩となりますよう、多数の皆様方のご支援と御協力を御願い申し上げます。
2010年10月

第14回日本医薬品情報学会総会・学術大会
大会長 澤田 康文